2017年3月2日木曜日

自動彩色サービスはすごい

Paints Chainer」というサービスが話題を博している。
AIによる自動彩色プログラムで、線画をUPすると自動でそれにあった色をつけてくれるのだ。その際、ここはこんな色というように指定することも出来る。
どれ位、自動で彩色できるかの実際の例はこちら
桜色の箇所は私が場所を指定したけど、それ以外は完全自動。
手を入れたい箇所は色々あるけど、ほとんど自動でここまで彩色されるなら申し分ない。

そしてここから例によってネガティブなことを書くが、時折聞かれる「AIによって職を奪われる」話、こういうことがあると実感もひとしおだ。
私は色つけが苦手だ。なので筆ペンでのモノクロ絵しか描かないのだが、このプログラムが本格実用化されたら、私のような線画、モノクロ画専門の人間でも彩色して当たり前になるかもしれない。
多分そのうち、テーマを投入すれば勝手に線画を描いてくれるプログラムも出てくるだろう。それらを組み合わせれば、そこそこのイラストが簡単に作成させられるようになるのも時間の問題な気がしてくる。

もちろん、細かい部分の修正・監修が人間の作業なのはしばらくは続くだろうと思う。
でも、どうなんだろう。
現実の生活で、本当に細かい部分の作り込みを重視することってどれ位あるだろうか。
個人的には、あんまり無いような気がする。
仕事をしていてよくあるのが、「ここにちょっとした絵がほしい」という需要で、例えば「いらすとやさん」はそれに対応して人気を博している様におもうのだが、それがプログラムでぽんとある程度簡単にそこそこのものが出来るのなら、どうだろう。
ある一つのジャンルの衰退は、それに関わる人々の減少と直結する。
それ自体が粗製乱造でも大量にできる様になり、高度な技術を必要としない人が増え、高度な技術を継承する価値が衰え、それに関わる人間が減り、それが粗製乱造をより活性化させ当初粗製乱造と思われたレベルが一般化してしまえば、高度な技術は「金持ちの贅沢」か「博物学的なサンプル」になる。
だとしたら、この手の話をする時、超絶技巧の最先端の絵師や人気絶頂の絵師を持ち出して「そのレベルに達するのはまだまだ先だ」と話す向きも時々いるけど、それはあまり意味が無いような気もする。
AIに職を奪われビジネスにおいて駆逐されるのは「その他大勢」で、だがその業界のレベルの高さを維持するためには「その他大勢」がどれだけいるかで、裾野が広くないジャンルは高さを維持できない。
AIは天才になる必要は無いのだ。
多くの凡才を駆逐してしまえば、天才を生む土壌も無くなるのだから。


…と散々AIを攻撃するようなことを書いておいてなんだが、言いたかったのは実はそこではない。粗製乱造とは言えそれを利用する人が増えることがそのジャンルを活性化させる一面もあるということの方が大事なように思うのだ。
絵画そのものはこれまでの膨大な流れの中で何度も高度なレベルでの完成を見てきたと思われるが、その都度パラダイムシフトが起こって新しい方向性が生まれた。
そんな中でも大きな変化の一つは印刷技術の登場だろう。
印刷技術の出現は当時の絵画に携わる人々の職を大きく奪ったと思われる。
だが、印刷技術によって絵を大量に見る人が増えたことが、絵の需要を活性化させ、絵があるのが当たり前になり、それが結果的に後に多くの人々に職を与えたとも言える。

AIによる変革もまた、短期的には多くの人の職を奪うけど、その先に多くの、今は無い職を生み出すきっかけになるのではないだろうか。(実際Paints Chainerでも、自分にとって一番気持ちいい彩色をさせようと考えるとなかなかしっくりこなかったりもする。こだわりだすと果てがない。上の話は「こだわりのない世界では凡才が死ぬだけでジャンルも殺せる」という話だが、こだわりは人間の業であって、みんな悟りでも開かない限りなくならない。
それがどんな仕事かはわからないし、たぶん私は適応できず滅びる方だろうけど、そう考えると未来もまた面白そうだと思えてくる。

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