2009年11月17日火曜日

映画版『魍魎の匣』を見た

映画版『魍魎の匣』を見た。

徹底した画面作りは、随所に美的なけれんみがあって好き。
役者も、原作のイメージから離れた人もいるけど、映画としてはありだと思う。

途中までは、原作を割と良い感じに換骨奪胎してるように感じながら、楽しく見ていたが、最期に近づくにつれてなんか無理を感じるようになった。

全体通して、原作の「連鎖的なボタンの掛け違いによる不条理感」(=魍魎感というべきか)は抑え気味にし、匣のイメージを強調している感じである。

それは一緒に収録されていた予告編でも特徴的。

思うに、匣のイメージは映像化しやすい、絵にして分かりやすいというのはあるだろう。
また一方、ボタンの掛け違いは、一つのシーンを見逃しただけで成立しにくくなる。
限られた枠の中で最大限の効果を出そうと考えた時、やむを得ない選択立ったろうと思う。

だが、その結果、最期の京極堂による憑き物落としのダイナミズムが弱まってしまったのは残念。

なんとなれば、憑き物落としとは、複雑連鎖的に絡み合った事象を、別な事象・別な視点を通すことで解体・再構築することに他ならない。
絡み合う事象が複雑であるほど、落ちた時のカタルシスは強烈となるが、今回の映画では、美馬坂に様々な暗部を集中させてしまったことで分かりやすくなった反面、掛け違いや、ズレは無くなってしまった。
この為、原作を読んでいた身には、クライマックスに向かうにつれ、騒がしさだけが目についてしまった。

とは言え、やや無理はあっても、美的な画面とハイスピードな展開と、原作に縛られない個性的な役者の組み合わせで、あの膨大な作品をまとめきったのはすごいと思う。

気のせいかもしれないが、役者たちが割と自由にやってるような印象を感じたシーンがあった。
演出なのか。
楽しくやってる感がある。
京極堂があたふたと「何で僕を引きずり込むんだ!」と訴えるシーンとか。
まあ原作破壊的だったりはするんですが、私は好きだ。

一部グロなシーンもあるが、そういうシーンが苦手じゃない方にはオススメ。

2009年11月14日土曜日

歯医者に行きました

実に5年ぶり位の歯医者。

先日、ずっと前に詰め物が取れた左側の下の奥歯の辺りが急にズキズキ痛み出し、それも歯自体と言うより顔の左半面が偏頭痛-眼痛-歯痛-首から肩の筋肉痛という状態になった。
どうも、放っておいた歯のせいじゃないかと思えたのだが、その日は行く暇が無く、とりあえず風邪っぽくもあったのでその日は頭痛薬を飲んでさっさと寝た。

翌日には左半面の痛みは落ち着き、結局風邪だったっぽいことが判明したが、気になるので久しぶりに歯医者に行くことにした。
実は、「歯が痛い」と言った時、妻が見つけてくれた歯医者に興味が沸いたことも理由の一つ。
そこは「薬で虫歯を治す歯医者さん」なのだ。

行ったのは早良区百道の谷口歯科医院(http://www3.ocn.ne.jp/~tdc28/)。

土曜日の午前、予約無し。
相当待たされると覚悟したが思ったほどでもなく名を呼ばれ治療台へ。

歯科衛生士の方に症状を話し見てもらう。
左側上下のレントゲン写真も撮る。

「取れた詰め物は白いものじゃ無かったですか?」

そうかもしれないが、良く覚えていない。
なんせ息子壱がまだ保育所の頃の話だ。

その後、口内から歯垢を採取、席を移し顕微鏡をセットしたPCの前に座らせられる。
歯科衛生士さんが操作すると、ディスプレイ一面に細菌達が「かもすぞー」の大合唱!

嘘です。

細菌は小さい点が漂うように動いている。点のもの、線のもの、くねくねしたもの。
くねくねしたものが歯周病菌なんだそうだ。
1画面に数匹程度なら問題ないということ。
歯周病がひどいとこの菌が画面に大量に現れるらしい。

その横に細長いものがグシャっとまとまったような固まり。これも所々にある。
これがカビ菌なんだそうだ。
カビ菌は食べ物や空気中を飛んで口内に入るので根絶はまず不可能だが、これも多いと細菌の快適な住処になり、口内環境悪化につながるので、少ないにこしたことはない。
しかし、まあ、私の場合はそれほど多い状態ではなかったらしい。

そういえば、「もやしもん4巻」の巻末で、オリゼー(麹カビ)とS.セレビシエ(酵母)とラクトコッカス・ラクチス(乳酸菌)が、漫画では同じ大きさだが現実にはものすごく大きさに差があるんだよ…という話があったけど、カビと細菌の大きさの差は、正にあれ。

その後、先生が来て検査。
結果、おそらく、歯ぎしりのせいじゃないか?とのこと。

歯ぎしりすると、歯の根元は骨に固定されてるので動かないが歯の先はそれなりに動く。
するとその力がちょうど根本の辺りに集中する。
その結果、その辺りの表面のエナメル質が壊れて知覚過敏状態になったのではないか。
また、下の歯の一部も欠けているが、外から何かぶつかるのは考えにくいので、堅いものを噛んだとかでないならこれも歯ぎしりの結果欠けたのではないか。

という。

なるほど。

歯ぎしりすると、歯の周りの筋肉も緊張状態を続けるし、その結果そちら側に偏頭痛や肩こりが発生するのもうなずける。
としたら、歯ぎしりの原因を探して直すことが、まあ、根元治療になるんだろうが、この辺になるとなんだか精神的なものが関係しているような気もする。
と、これは私の感想。

治療方針としては、歯のクリーニングを行い、知覚過敏が起きている所に知覚過敏の薬を付け、フッ素処理を行ってみましょうとのこと。

また歯科衛生士の方に代わって、まず、カビ菌なども殺す薬を歯全体に塗布。
次に歯の汚れや歯石を丁寧に削り落とす。
下の前歯にあったてっきり詰め物だと思っていたものが、実は歯石だったりしてびっくり。
左側奥の歯ぎしり地帯のエナメル質が壊れた場所に知覚過敏の薬を塗布。
あと、たぶんフッ素処理もしてくれたみたい。

所要時間は最初の検査含めて約1時間半くらいかな。
料金は2,000円ほどでした。

思っていたより口内環境は悪くなかったようだ。
てっきり、奥歯含めボロボロでいつ入れ歯になってもおかしくないと思っていたのだが。

一応、毎日朝・晩歯磨きしているのと、ここ数年はキシリトール入りのデンタルリンスを使っているのも良いのかも知れない。

結局、「薬による虫歯治療」を受けることは無さそうだけど、泳ぐ細菌達を見れたのは良かった。
しばらく通ってみるつもり。

2009年11月4日水曜日

『アキレスと亀』

『アキレスと亀』を見終わった。なんとも哀しい悲しい話だ。夢を追う人間の悲劇。「夢を追う」事自体が幸せであることに気が付けない人の悲劇だろう。

最後のシーンは、男のロマンと言うべき御都合主義なシーンだ。無かったら本当に救いが無いが。

『アキレスと亀』は実に北野監督らしい作品だ。絶対的な悪人はおらず、同時に、真綿で首を閉めるような優しさに満ちている。

良い映画だが、苦い。夢を追うことを諦めた人間は、見ると死にたくなる。

表現の良し悪しなど紙一重で、楽しければそれで良いと思えるか思えないかの差だ。

他人(世界、評価、成功、名声)とのギャップを気にする人間は、「アキレスと亀」のジレンマに囚われ、逃げられなくなる。亀との差ではなく、走ること自体を楽しんでいたらそうはならない。かもしれない。理論家は理論に縛られる。

ところで、中年期の主人公とそれ以前の存在感とにギャップが有りすぎな気がする。

妻が積極的に手伝い始める一歩手前の時間が必要だったのでは?敢えて抜いてるのかも知らないが。そのせいで最後のシーンが私には御都合主義に感じられたのだと思う。子供がいてあそこまで行くかね?

行くから映画なんだけどね。

たけしがやるから救いがある。

現実にはもっと悲惨な話がいくらでもありそうだ。