2008年11月3日月曜日

『リアル』8巻読了

AM1:00

コンビニに『リアル』8巻を買いに行った。
近所のセブンイレブンは品切れ、ファミマで購入。

物語がようやく起から承へ移ってきたように思った。
久信の物語が動き出したのが大きい。

父親のメールのシーンは微笑ましい。

それと朋美の物語も動き出した。

車いすバスケがメインで、このままバイプレーヤーで終わるんだろうかと感じていたので、ちと嬉しい。
『リアル』の陰の主人公は彼だと思う。
少なくとも彼の視点が無く、清治と久信等の話だけだったら、いい話にはなるだろうけど『リアル』にはならないと思う。
『リアル』の物語をリアルなものとして感じさせているのは、彼の存在だと言って良い。

8巻中で「100mを9秒で走っても鳥から見たら“飛べない世界”の話に過ぎない」という表現が出てきた。
物語とは別な解釈で使えば、健常者にとって車いすバスケの話は、自分たちから遠い世界、空を飛ぶ鳥のドキュメンタリーに過ぎず、どう空想を逞しゅうしてもそれをリアルに感じることは難しいと思う。

だから物語作りの現場では、ともすれば彼らをヒーローとして描く。
ヒーローの物語はわかりやすいからだ。

でも、その裏面にある苦しみや悲しみは「ヒーローの物語」という枠組みで囲まれ、記号化されてしまう。
本当に巧みな語り手とは、ヒーローを聞き手自身や、身近な存在として感じさせることが出来る語り手だ。

そういう意味で、この物語で野宮朋美の視点を用意した井上雄彦はやはりすばらしい語り手と言うべきだと思う。
かつ、ともすれば愛すべきバイプレーヤーとなりがちな存在の彼の物語をきちんと動かしてくれたのは嬉しい。

これからどうなるんだ!!と楽しみになった途端、読了。
次巻は…2009年秋。

フガッ!

ちなみに、他に「ヒーロー」をヒーローとして描かないでヒーローの物語を成立させている人として好きなのは曽田正人氏。
特に『め組の大吾』は、結果的には世界のヒーローになった青年の話なのに、弱点をきちんと弱点として描きながら成長を語ることと、畳みかけるようにスピード感で、ヒーロー的な印象を感じさせずに物語を成立させていたように思う。