この本の名前を聞いたのは、今は無き某ディスカウントストアの店員をやっていたころです。(奥付きを見たら2000年発行になってました。)
その当時は、今以上に経済活動に対して反発を持ち頭が硬かったので、正直この書名を見てかなり引いたことを覚えてます。
豊富な氷に囲まれた人々に氷を売る。これって詐欺師の話と何が違うのだ?
でも、実際読んでみたら結構面白かったです。
この本を書いたジョン・スポールストラは、バスケットボールチームの経営を歴任し、現在もスポーツ・エンターティンメンと世界で活躍している経営者で自称アメリカスポーツ界に初めて本格的なマーケティング手法を採り入れた人物です。
ニューヨークの隣に位置するニュージャージー州は、人口や経済規模から言ってもアメリカ全体で8位くらいにくる州でありながら、そこの人々の多くはニューヨークに仕事を持ち、TVもラジオもニューヨークの放送局のものを見聞きし、心情的にもニューヨークの文化圏にいると感じている人が多いところだそうです。
日本でいえば東京に対する神奈川、埼玉、千葉などに近いでしょうか。
ここにホームを置くプロバスケットボールチーム、ニュージャージー・ネッツを立て直した施策を紹介しつつ、その根底にあるマーケティング的な手法を説明するのがメインテーマとなっています。
曰く「多くの原則を実行するなら、エスキモーの人たちに氷を売り込むことさえ可能だろう。」
で、最初の私の反感につながるわけですが、その反感の根底には日本古来の「商人道」の考え方があるように思います。
(これ「商道」と書くと韓国ドラマに…)
“ お客様に喜んで納得して買ってもらおうとする心を持って、品物(商品)には常に心を込めて気を配り、売買することで経済原則にふさわしい適正利潤を得るようにすれば、「福を得て、万人の心を案ずることができる」”
と言う考え方ですね。
石田梅岩と石門心学http://www.joho-kyoto.or.jp/~retail/akinai/senjin/ishida.html
これに対し、この本では本文の1行目の言葉で次のように語っています。
“私たちのほとんどは、最高の商品を、最大の広告予算を使って、最良のマーケットに売り込み、最大のシェアを獲得するというチャンスには、まず出合えない。”
バブル崩壊→不景気とデフレ→実感のない好景気という時代の流れの中でアップアップしている人間には、正直後者の方がリアルであると言わざるを得ません。だって、パーフェクトな物でなければ売っちゃダメなら、多くの人は職を失い、生きていくことは出来ません。
実際、書かれている様々な手法は役に立つ物です。
明日からでもすぐ仕事に生かせるものであり、しかし同時に道具でしかありません。
それを良く使うか悪く使うかは使う人間次第…なわけです。
私の反感は、道具の持つ可能性を倫理観から批判すると言う行為だったと言えるでしょうね。
全部読んだら、また感想を書こうと思います。