2015年8月29日土曜日

根性はルールを変えるか アニメ 「ソードアート・オンライン」に想う

アニメ版『ソードアートオンライン』の一期二期を見て、どちらにも共通して出てくるのが、「キャラクタの不屈の精神が奇跡を起こす」的な展開。
この手のパターンは電子ゲーム機黎明期の『ゲームセンターあらし』でも見受けられたもので(コンピューターの処理能力を超えたことを人間がやれば、奇跡が起きる…と言う描写。現実には、超えた部分は遅延処理されるか、無かったことにされる。)、大変いろいろな意味で面白い。
ゲームのプログラムは、あらかじめ決められたゲームのルールやシナリオに応じて構築されるから、「奇跡っぽく見える展開」はありえるが、ルールやシナリオを越えた、本来の意味における奇跡はほぼ存在し得ない。
存在するとしたら、あらかじめ存在していたバグがそうした展開を可能にした場合だが、これはまあ、かなり安易な話だ。それこそ「ご都合主義」というもので、お話内の仕組み上は仕組まれてなくても、作家レベルでは作られた展開というべきだ。
いやまあ、その、それでいいのだ。読んで見てて快感があれば良いのだ。
ただまあ、偏屈な人間にはそんなどうでも良いところがそこはかとなく気になる。
ご都合主義じゃない、違和感の無い、そんな仕組みが有り得るか?
ちょっと考えてみたいと思う。

一番しっくり来るのはどんな仕組みだろう。
プログラマによって予め書き込まれていた場合だ。これは上に書いた「奇跡っぽく見える展開」を予め組み込んだゲームだったという事。
これが一番簡単。
この場合、問題となるのは何をトリガにしてその展開が始まるかだ。
他のキャラクタとの関係性を数値化し、ある一定の数値となった人間の前にだけ奇跡的に見える展開が始まる。
この方法の問題は、その一定の数値をどこに用意するかだ。
その数値の設定次第でゲームクリアの難易度は大きく変わる。
キリトはけして一般的なキャラクタではなく、あれを唯一の基準にするのはゲームバランス的にどうだろう。
なにより、このやり方は例外処理だ。
終わりを予めデザインしていたに等しい。そんなものはこれまでにもいくらでもあった。命を懸ける価値があるだろうか?
可能性として考えられるのは「成長するバグ」を組み込んだ可能性だ。
途中でAIキャラが登場するけど、あんな感じで。
はじめは単なるバグ取り作業中に見つけた、ただのバグだったのを経験を蓄積するようにして、それをアルゴリズムに反映させる仕組みを作って…とやっていったら楽しくて楽しくてたまらなくなってのではないか。
(あのAIキャラがと言うことではなく、あれを生み出す仕組み自体がと言う話)
バグは組み込んだ、でも、それがどう育ってどう世界の趨勢に影響を与えるかは未知数。と言う状態を作ったら、当然それを試したいと思うだろう。
それも最高の状況で。
そうしてあの話が始まったと考えるとしっくり来る。
答えを知っていたなら、その中に閉じ籠もる作り手の意識は内向きだ。オナニーにすぎない。
答えが変わる、それも場合によっては致命的に世界のルールを壊してしまうほどに変えてしまう可能性を内包したものが、紛れ込んでいる状態。
こう言う感覚、テーブルトークRPGで、人数とか、ルールの理解度の都合でゲームマスターをやらざるを得なかったような人には身近な話ではないだろうか。
自分がルールを決めざるを得ない状態。
我思う故に我らありの神の視点。
この視点は、1プレーヤーとしてはつまらないのだ。
でも自分でも動かせないルールが、自分と預かり知らぬ所で勝手に生み出される可能性があるとしたら?
それは、とても魅力的なものだ。
結果的に自分が討ち滅ぼされる事になるとしても、自分が作り込んだ世界が崩壊してしまうとしても。
奇跡とは、本来抗がう能わざる摂理を越えたものであり、彼はそれを欲した。
それも、自らが考え得る究極の世界の摂理を越えた奇跡を。
冒頭のタイトルに戻ろう。
根性でルールは変わるか?
そのルールを作ったものが、変わることを欲するならば変わる。
根性である必要はない。
逆に言えば、根性であっても差し支えない。
その世界が変わることを期待するなら、否、「完成」を留保し続ける限り、ルールは変わり得る。
エデンの園の蛇と知恵の実のように、完成されたものを揺らがせる存在。
完璧なものが作れる者ほど、それを揺らがせる可能性を作りたい欲望もまたつよいのではないか。
一期は少なくとも、そうした神の視点がバックボーンにあったと思うのだ。
それと、ナーブギア。
たぶん肉体駆動以外のデータもフックされてたんだろうな。
んで、それもバグに取り込まれていく…と。
んー、例えば、パチンコでプレーヤーの様子を見て、不機嫌になったら確率を上げて、のめり込んでる時は微妙に率を避けたり出来たら、はまる人を増やせると思うのだ。(法律上は違法だけど)
それと同じ事を当初もくろんでいたのではないか。(プログラマというよりゲーム会社が)プレーヤーの感情データを取得し、より快感につながるシナリオを提示するシステムがあったら。
そのために、そうした感情データも取得されてたのを、上のバグに食わせていたと考えるなら「根性でルールが変わる」システムの登場だ。
まあ、だから何だって話ではないのだけど。
不可逆的な諸行無常なこの世では、完成に見えるけど完成しないことこそが、本当の完成というお話。

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