2012年3月19日月曜日

「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎著

文庫版『フィッシュストーリー』(新潮文庫)の中の一遍。
久々にもろ好みの作品に出会えた気分。

伊坂幸太郎の作品にはどことなくカートボネガットの作風を感じるのだが、その真骨頂と言う感じ。
短い話が絡み合い、本人たちが意識しないまま、ある運命の大きな流れを構築するという構造。
他の作品では、談判破裂して暴力の出番となることがやや多い様に思うが、この作品はその無理矢理黙らせる感がほとんど無く、ふわふわとたんたんと物語が紡がれていく。こういうの好きだ。

そしてそれを英語でほら話を表す「フィッシュストーリー」と名付ける感覚もいい。
確かにほら話で、ほら話ゆえのカタルシスがある。

リアルであることが絶対ではない、正しいわけでもない。
リアルでないことを開き直りながら、因果をめぐる冒険をはにかみながらふわふわと語る、こういうお話が、伊坂さんの真骨頂じゃないかと思う。

そして、伊坂幸太郎にあって村上春樹に無いのは、この明るいふわふわ感だとも思う。

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