かつて床屋さんは、髪を切るだけの仕事ではありませんでした。
ヨーロッパでは外科医の仕事もしていたため、洗って店先に乾かした仕事で使う包帯が、床屋さんの目印となり、今でも動脈と静脈と包帯を現す赤青白の回転灯にその伝統が残っています。
鬚や髪は人にとって生きてる証であり、生命力そのものとする信仰が洋の東西問わず存在します。巨人サムソンは鬚を切られて怪力を失いましたし、丑の刻詣りのわら人形に入れるのはなんといっても髪の毛です。戦地で戦死した人の遺髪を持ち帰るというのも、僧侶が剃髪して出家する、荒くれ者が鬚を生やすと言うのもこの信仰に由来します。
だから、これを扱う人々、床屋さんは、人の命を扱う特別な人々だったわけです。(その感覚があったから、外科医の仕事にも繋がっていたんですね。)
さて、
午前の時間を使って、近所の床屋さん「3Q CUT(サンキュー カット)」に行ってきました。
カット専門で1カット1000円、所要時間10分と言うのだから、時間の無い人間にぴったり!
場所は大和町の、かつて吉川晃司がザ・ベストテンで生中継で唄ったことで一部地域の一部世代に有名なパイナップルステーションというテナントビル。
ちなみに山頭火の向かい。
駐車場は空いてたのでラッキーと思ったが、店内は満員、待ってる人も十人近くいる。
「いらっしゃいませー。初めにカットカードをお買い求め下さい。」
見ると通常レジカウンターに当たる所にポツネンと小さなカード販売機。千円を入れるとシュッとプラスチックのカードが出てきた。
それを持って待合席へ。
待合席には数字がふられていて、早くきた順に詰めて座り、一番の人が呼ばれると一つずつ詰める仕組み。
待ちながら店内を見回す。
カットのための席が四席プラス子供席が二席。全部にスタッフが立っており、常にフル稼働。
カット専門と言うだけあって、洗髪、鬚剃り、パーマやカラーリング、マッサージのたぐいは一切無し。ただ、切るのみ。
各席も極めて機能的に作られていて、
洗髪が無いので細かい髪の毛が残らないようにするために掃除機が使われているのだが、道具棚に上手く隠されていて結構格好よく使われていたり、
切って床に散った髪の毛をチリトリ使わずに済むように、道具棚の下に小さなすき間があってその奥の空洞に掃き込めるようになっていたり、
細かい直しで、普通鬚剃りを使うようなところも、全てバリカンのそういうモードを使って処理し、鬚剃り関係の道具が要らないようにしてあったり。
良い悪いはさておき、とにかくカットのためだけに機能を限定集中させてありました。
そうこうしている内に私の番。
「ビデオのある席で良いですか?」と聞かれ「どこでもいいです」と応えると、案内されたのは子供用の席だった。
鏡の前に割と大きめのDVDプレーヤー。アニメとか見ながらカットできるらしい。鏡の周りにはキャラクター物のぬいぐるみ。おもちゃがあったり、車型のシートがあったり。
しかも、窓際の割と目立つ場所。
…まあ、いいや。(^^;
さすがにDVDを見させてっもらったり車のシートに座ったりする勇気はありませんでした。
カットはスムーズでそれなりな感じ。
心持ち雑な感じがしたのは「安い」という先入観があるためかも。
あまり余計な注文は(やってくれるかもしれないけど)できない雰囲気。
有り体にまとめてもらいました。
所要時間15分位。
待ち時間を入れて45分程。
待ち時間がネックなのが店側もわかっていると見えて、待合席に空いてる時間帯(お昼から二時三時と六時から閉店まで。それと雨の日。)を御利用下さいと貼り紙してありました。
まあ、待ち時間を入れても。普通の床屋さんで待ち時間入れて2時間位かかることもあるのを考えれば早いと言えるでしょう。
ただ、なんというか、
「チャップリンのモダン・タイムスに出てきそう。」な感じで、ゆったり感とか安らぎ感はありません。機能的で、安くて早くてそこそこの出来ですが、なんか物足りない感じがするのは、やっぱり今までの床屋さんのイメージがあるからでしょうか。
でも、ただ安いだけの店だと技術が低い(明らかに新人しか使ってない)所も多いですが、ここだとそれなりに安心してやってもらえそうな気がします。
一日に相当数こなしてるでしょうから。
お金も時間も無い時には、ありがたい所だと思います。
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