2009年7月18日土曜日

「スカイクロラ」の感想

大分前に読み終わって、何度か読み直し、感想も一度書いたのだが、改めて書いてみようと思う。

と言っても、結局、映画版との比較に終始するのだが。

原作を通して感じるのは、翼を失った天使の物語というイメージで、それに対して映画のテーマは卒業なのだ。

もちろん、勝手なイメージ。

「終わらない話を終わらせる」という点は共通なのだが、視点が違う。

原作が「天使でいたかった子等の視点による堕落と、堕落を逃れるための昇天」を語っているのに対し、映画は「卒業した者の視点によるモラトリアムからの卒業」に重心が置かれている。

感覚的には、原作の語る子供観には納得する部分も強い。

しかし、それをヒロインの死で無理矢理終わらせた感じも正直ある。

それは、続く方が(堕落していくことの方が)残酷で救いが無いと私が感じているからかもしれない。

「スカイクロラ」以前の押井作品は、「世界を停滞させようとする者とそれを妨害する者の戦い」をテーマにしている事が多かった。

その際、従来は、ややノスタルジー的とは言え、「停滞させる者」を(麿子や、ケルベロスなど。)魅力的に描くことが多かった。

またそれゆえに、「スカイクロラ」が琴線に触れたんだろう。

しかし、原作の持つ「そのままを求め叶わぬ哀しさ」を俎上に載せた時、押井自身の「停滞させる者」よりも「それを妨害する者」への要素が強くなったのではないだろうか。

それが上述したイメージの違いになったのではないだろうか。



そんな気がした。

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