2019年11月1日金曜日

「ヒトラーに屈しなかった国王」を観た

ノルウェーの映画。原題は「kongens nei(国王の拒絶)」。Amazonプライムで観た。

第二次大戦のノルウェーを舞台に、ヒトラーの侵攻を受け、圧倒的に不利な状態で降伏を迫られたノルウェーの国王がそれを拒絶するという史実を元にしたお話。
全く知らなかった。割と早々にナチスドイツに占領された印象しかなかった。

あらすじだけだと、正義の名の下になんかすごく雄々しい感じで拒絶したようだけど、延々、ナチス・ドイツの軍隊から国王たちが逃げまどう話が主で、拒絶に関しても爽快感はない。格好良いかどうかで言えば格好良くない。でも、そこがまた格好良くて極めて面白い。

ノルウェーは立憲君主国なのだけど、その形でスタートしたのは1905年で、その時デンマークの国王の弟夫婦を王として迎え入れたのが王国としてのスタートだったのだ。近代の他の立憲君主国同様、君臨すれど統治せずで政治権力は持たない国王としてではあるけど、ノルウェーの王様は世界にも稀な「国民に求められて戴冠した国王」なのだ。
しかし外から見れば、国王は権力の象徴に見える。ヒトラーは大使を通じ国の代表としての決断をこの国王に迫る。
そのギャップ、国家の権力とは、民主国家とは、国王とは、といった問いかけが物語の横糸になっている。

もう一つ大事な要素は家族というキーワード。
孫とかくれんぼしてる国王のシーンから始まるこの物語は、国王一家の普通の家族らしさと普通でない家族らしさが描かれていて、苦境の中でそれでも家族を手放したくない家族を守りたい心情が見え隠れしている。
これは国王側だけではなく、交渉の矢面に立つドイツの大使もまたそうで、家族を守るとはなにかが物語の縦糸になっている。

あまり細かく書くとネタバレになるが、全編通して感じるのは、非常に人間臭い映画だということだ。
戦争映画は、割と善と悪とか、敵と味方とかの図式の中で、非人間的な存在を描くことが多い。(人間的な人でもこんなに非人間的になる。戦争って嫌ね…みたいな。)
でもこの映画ではだいぶ違う。
国王も家族も、閣僚たちも、兵士も、敵であるナチス・ドイツの面々もまた、非常に人間臭い。
自分なりの理想やこだわり、自分なりの正義感や嫌悪感、自分なりの打算や企て、自分なりの苦しみや喜びのもとに生きている。
特にナチス・ドイツに関わる人たちをここまで人間臭く描いている映画は数少ないのではないかと思う。

それと、戦闘シーンはメインではないのだが、割とリアルでいい。
砲撃シーンや、銃撃や空爆のシーン。
敵側の視点が入らないのがいい。
空爆の場合、爆撃され、撃たれ、逃げまどい隠れる人々を描くのに集中してるのがとても新鮮だった。

良い映画だった。

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