2012年9月3日月曜日

『柴錬水滸伝 われら梁山泊の好漢』柴田錬三郎著

図書館で借りた。

水滸伝関係をまともに読んだのは、横山光輝の水滸伝くらいで、解説本は読んだことはあるけど、ほぼこれが初見と言って良い。
なので、他の作家の料理法との違い=柴田錬三郎の魅力を語るのは無理。
まずは水滸伝独自の世界観に印象が集中している。



●この頃の中国は人肉食が一般的?

随所に出てくるのが人肉食。
盗賊の経営している酒場では、どこもかしこも、追い剥ぎした犠牲者の肉は肉団子にするは、山賊は酔いざましに人の肝でお吸い物を作るは。
んで、どうやら美味しいらしい。
もーほんと、どうどうとしたもの。
柴田錬三郎だからここまで残したのかもしれない。漫画とかだったらどうだろうか。掲載紙にもよるだろうし作家次第だけど、ここまでは出せないんじゃなかろうか。
魯迅の作品にもこそっと出てくるけど、その原型がこんな世界だったんだなあと驚きつつ納得。

●宋江はヒロインだ

いや、別に女だったという話ではなく、今の日本のアニメとかだったらヒロインがやる役処を宋江が担っているように思った。
端的に言えば「事件のきっかけとなり、囚われ、鞭打たれ、助けられ、味方を奮い立たせ、神となる。」ということ。
ジャンヌ・ダルク的と言うか。
宋江を女として語るバリエーションがどこかにあっても驚かない。

●好漢って結局悪漢だよね

水滸伝の中で好漢と呼ばれてる人々、と、三國志に出てくるそれ。
たぶんあんまり変わらないのかも知れないけど、文化が成熟していた分、水滸伝の好漢たちは、非常に具体的に犯罪者で、「志を持っているのに社会が腐敗しているからあぶれものにならざるを得ない」タイプは1~2割で、それ以外は「あぶれ者だけど宋江を敬うから好漢」とされているパターンばかり。
こいつらの被害にあってる食い物にされている人々、本当の意味で弱い人々はここには出てこないし語られない。
日本のヤンキーものとかヤクザものと同じ。
社会が不安定だから社会を否定する、でも、だからと言って社会から否定されるものが必ず正しいわけはないのだが、そう考えると分かりやすいからそう考える。
でも、いくら役人賄賂万歳の腐敗政治が行われてるからって旅人殺してその肉を肉饅頭にする奴を好漢と呼ぶのはおかしいだろう…と思うのは現代日本人の視点なんでしょうな。

異世界の物語と思って読むのが吉。
もちろん、突っ込みながら読むのと良いけど、ここから倫理とか道徳とか生き方とか読み取ろうとするのは、たぶん間違ってる。
これ読み切ったら、水滸伝はしばらくいいや。

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